「変わりたいのに変われない」
多くの人が抱えるジレンマですよね。
そしてこれは、個人に限らず組織においても起こるジレンマだと思います。
今までのやり方でよい
と心の底から思っている人は、多くないはずです。
だけどいざ、変化させようと思うとうまく進まない。
進まないどころか、どんどん混乱している??
どうしてそうなるのか?と言えば、
ほんとうは、変わりたいとは思っていない
なぜ変わらなければいけないのか、自分たちが納得していない
これが大きいのではないか?と思うのです。
今までのやり方でよいとは思っていないけれど、変わりたくはないって矛盾しているみたいですよね。
だけど本音はここなんじゃないかな。
「業績も下がっているし離職率も増えてきて。きっと今までのやり方のままではいけないのだろう。それはわかる。でもできることなら、あまり変わらずに何とかできないかな」
どうしてこんな矛盾が起きてしまうのでしょうか。
変革の失敗の92%は、権力をもっている人が、自ら「変化を恐れること」から生じる
人材開発や組織開発を研究されている、立教大学の中原教授のブログにこんな記事がありました。
変革の失敗の92%は、権力をもっている人が、自ら「変化を恐れること」から生じる!?
中原先生は、南山大学の中村教授の勉強会に参加された時に、講師からこの言葉を聞いて印象に残ったそうです。
そして私も確かにそのとおりだよなーと思ったので、この記事を書いているわけですが。
100%じゃないところがリアル(笑)
どうやって92%という数字を出したのかは気になるところですが、感覚値としては、そんな感じかなというところ。
中原先生は記事の中で、「どうして変化を恐れるのか」その理由をいくつか書かれていましたが、私もちょっと考えてみたいと思います。
そもそも人は変化を怖がる。成功が約束されていないなら、なおさら動けない
ほんとうは、変わりたいとは思っていない
なぜ変わらなければいけないのか、自分たちが納得していない
この気持ちの奥底には「怖さ」や「恐れ」があるのではないかと思います。
変化するって怖いですから。
最初から成功することがわかっている、今よりももっとよい未来がリアルに想像できるのであれば、変化はそれほど怖くないのかもしれません。
だけど今のように時代の流れが早くて、今までの成功法則が一切通用しないとなると怖さを感じて当たり前だと思います。
だって失敗するかもしれない
今よりも、もっと状況が悪くなるかもしれない
そんな曖昧な中に「エイッ」と飛び込んでいくには、相当の覚悟が必要です。
だけどその覚悟がないままに、とりあえず形だけでやろうとするから、やっぱりうまく進まないのではないかと思うのです。
特に今、権力を持っている人たちは、「こうやったらうまくいく」「こうしたらよくなる」という成功体験を持っている人たちですよね。
だから余計に「やってみないと、どうなるかわからない」ものに対する恐れや怖さが大きいのかなと。
組織じゃなくて自分自身を守りたい!?
中原先生は「変化を恐れる理由」をこんな風にかかれていました。
1.事業や組織が「昨日までのように動かなくなること」への不安
2.変化に際して必要な様々な調整、組織学習のコストを支払う事への不安
3.既存のシステムのなかで昇進してきた「自分」を「否定」されたかのように感じること
4.もしかすると自分の立場や権力を脅かされるのではないか、という不安
その中でも特に、3と4が深刻だと。
組織を守りたいわけじゃなくて、自分を守りたいのだと。
「やってみないと、どうなるかわからない」ことに取り組むのが怖いのは、確かに自分が今までやったきたことが脅かされることにあるのかもしれません。
先程も書いたように「絶対にうまくいく」のであれば、自分の立場や自分自身が否定されることはないですよね。
むしろもっと称賛されたり、立場が上がったりする可能性が。
だから、上の人たちはダメなんだ。
そんな人が管理職をやっている、うちの会社はダメだ
やっぱり老害は・・・
というのは簡単です。
だけど自分自身に置き換えて考えてみたらどうでしょう?
何かにチャレンジしようとして、躊躇したことはありませんか?
どうせ私なんて・・と思って諦めたことはありませんか?
それも同じことですよね。
「絶対にうまくいく」と言われたらできるけれど、そうでなければ、やっぱり変わることは怖いことです。
だから「今、権力を持っている人たちがダメ」だと一刀両断するのは、ちょっと違うのかなと思います。
言いたくなる気持ちは、とってもよくわかりますが(笑)
変革することと相手をリスペクトすることは、全くベツモノである
ではどうすればいいのか?って話なのですが。
正直なところ、「これをすれば絶対に大丈夫」という成功術を私は知りません。
その成功術がわかっていれば、きっとどの組織も苦労することはないはずだし、私自身がもっと違う仕事をしています(笑)
でも、これは大事だよねということはあります。
中原先生の記事にある、この言葉がヒントです。
権力を培ってきた過去がリスペクトされていないこと
権力を失いかねない未来が生まれ出るかもしれないこと
に抵抗している。
自分自身を否定されること、自分自身が守りたいものを守れないこと
ここに抵抗しているんですよね。
だったら、変革とリスペクトは全くベツモノであると理解してもらえばいい、ということだと思うのです。
権力に関しては、ほんとうに『権力そのもの』が欲しいのかな?と。
権力を欲しがるその後ろには、もっと違うものが隠されれていて、それはやっぱり
自分自身を認めて欲しい
自分自身をリスペクトして欲しい
という気持ちなんじゃないかと思うのです。
人は誰しも認められたい、尊重されたい、という気持ちを持っています。
そのわかりやすいひとつの形が「権力」なんじゃないかな。
だとしたら「権力」以外のもので相手を認めたり、尊重したりすることができたら、権力だけにしがみつく人はいなくなるんじゃないかと思うのだけれど、甘いでしょうか。
変革したらどうなるのか、それをやらなかったらどうなるのか、腹落ちするまで議論すること
言葉って便利で、それっぽく聞こえるように伝えることはできるんですよね。
だけどその後ろにある気持ちを無視してたら、言葉と行動に矛盾が生じます。
そしてそれが、物事がうまくいかない大きな要因だと思います。
変化や変革に関しても同じこと。
言葉でいくら「変わらなければ」と言い、制度や組織だけを変えたところで、気持ちがそこになければうまくいきません。
まずは本当に変わりたいと思っているのか?変わらなければいけないか?を当事者が腹落ちするまで、議論しなくてはいけないのでは?と思います。
もしも変化に対する「恐れ」があるのであれば、何を恐れているのか?をこれ以上ないところまで、深掘りすること。
そして、
変革することで、どんな未来が待っていると考えるのか
変革せずにこのままの状態が続くと、どんな未来になると考えるのか
この2つをリアルに描くことが大事なのではないかな?
少なくとも「今のままではいけない」という気持ちがあるのであれば、何もしないままの状態で、理想の未来が描けるとは思っていないはず。
変革することのメリット・デメリット
何もしないことのメリット・デメリット
それらを全部机の上に出した上で、「自分たちはどうするのか?」を考えることが大事だと思います。
『変革の失敗の92%が、権力を持つ人が変革することを恐れているから』だとすると、
恐れがどこから来ているのか、
恐れを少しでも軽減するにはどうしたらいいか
ここを見てみぬふりしたら、うまくはいかないってことですね。
それには権力を持つ人自身の自覚や行動も大事だけれど、それを支えるメンバーの意識や行動も重要。
つくづく組織とは、誰かひとりの力だけでは、うまくは回らないと思わされますね。